高速道路の深夜割引見直し、再び延期へ|ETCシステム障害が影響、導入時期は未定
2025年5月28日、NEXCO東日本・中日本・西日本の高速道路3社は、7月頃の運用開始を予定していた「深夜割引制度の見直し」を再び延期すると発表しました。今回の延期は、4月に発生したETCの大規模障害を受けたもので、制度変更に必要なシステム整備が進められない状況となっていることが背景です。
本記事では、そもそも深夜割引とはどのような制度なのか、見直しで何が変わる予定だったのか、そして延期の影響や今後の見通しについて詳しく解説します。
深夜割引制度とは?現在の仕組みをおさらい
現在、高速道路における「深夜割引制度」は、ETC搭載車を対象に「午前0時~午前4時まで」の時間帯に高速道路を走行した場合、通行料金が30%割引されるという制度です。これは全国のNEXCO管轄の高速道路で実施されており、物流業界や深夜の移動を行うドライバーにとって大きな恩恵となっています。
現行制度では、「対象時間帯に少しでも高速道路を通行していれば、全区間の料金が割引される」という仕組みになっており、たとえば0時1分に高速道路へ入って4時以降に出た場合でも、全走行距離分の通行料金が割引対象になります。
見直し予定だった新たな制度の概要
① 割引対象時間の拡大
新制度では、深夜割引の対象時間帯が「22時〜翌朝5時」へと拡大されます。これにより、22時台や23時台から走行を開始するユーザーにも割引のメリットが広がる一方、制度の適用方法が大きく変わる点に注意が必要です。
② 割引の対象は「時間帯内の走行分」のみ
最大の変更点のひとつが、割引の計算方法です。現行制度では「時間内に一部でも走行していれば全区間割引」でしたが、新制度では「割引時間帯に走行した距離のみ」が対象となります。
例えば、午前3時に高速道路に入って6時に降りた場合、22時〜翌5時の割引時間帯である3時〜5時の間に走行した区間のみが割引され、それ以外の1時間分(5時〜6時)は通常料金が適用されます。
③ 割引方式は「後日還元型」に変更
これまでの深夜割引では、出口料金所を通過する際にすでに割引後の料金が適用されていました。しかし新制度では、いったん「通常料金」で請求され、その後に差額分が還元される「後日還元型」に変更されます。
この還元を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります:
- ETCマイレージサービスに事前登録していること
- または、ETCコーポレートカードを利用していること
ETCマイレージ未登録の利用者や一時的な利用者は、深夜に走行しても割引の恩恵を受けられないことになります。事前登録が必須であるため、一般のドライバーにはややハードルが高い制度変更といえるでしょう。
④ 走行距離に上限設定、無理な運転を抑止
新制度では、深夜割引が適用される走行距離に対して上限が設定されます。
- 普通車・軽自動車:1時間あたり105kmまで
- 大型車など:1時間あたり90kmまで
これは、「割引を長く受けるために高速で飛ばす」といった危険な運転を防ぐための安全対策です。割引距離の上限を設けることで、無理な速度での走行を抑止しようとする意図があります。
制度見直しが求められる背景
深夜割引制度が見直される背景には、主に物流業界の労働環境改善という課題があります。現在の制度では、深夜0時前後に高速道路へ入るため、大型トラックが料金所手前で待機したり、割引を狙って予定よりも遅く出発したりするケースが多く報告されています。
こうした状況は、ドライバーにとって不規則な勤務や長時間労働の原因となっており、2024年4月に施行された「物流の2024年問題」とも密接に関係しています。制度改正により、より柔軟な働き方や時間帯の選択肢を与えようという狙いがあるのです。
見直し延期の理由はETC大規模障害
本来、この新しい深夜割引制度は2025年3月の導入が予定されていましたが、システム準備が整わず7月に延期されていました。そして今回、さらに再延期となったのは、2025年4月に発生したETCの大規模障害が原因です。
この障害により、ETC関連システムの整備作業が中断されており、新制度の導入に必要な基盤が整わない状況に陥っています。NEXCOによると、再開の見通しは立っておらず、現時点では新制度の運用開始時期は「未定」となっています。
なお、延期期間中は現行の深夜割引制度をそのまま継続するとされています。
インターネット上の反応と懸念の声
深夜割引制度の見直しについて、インターネット上ではさまざまな意見が飛び交っています。
- 割引制度が複雑になりすぎて一般ドライバーにはわかりづらい
- 走行時間帯だけが割引対象になると、ドライバーが無理に休憩を取らず走り続ける原因になるのでは
- ETCマイレージ登録を必須にするのは不便。旅行者や高齢者には厳しい
とくに、後日還元型への変更や走行距離の制限などは、日常的に高速道路を利用するドライバーにとって混乱を招く可能性があります。
一方で、物流業界の労働環境改善という目的に賛同する声もあり、「ドライバーの健康を守る制度として必要な見直し」「安全運転促進のためには仕方ない」といった意見も寄せられています。
今後の展望と注意点
新しい深夜割引制度が実施される時期については未定のままですが、今後もNEXCO各社からの公式発表を注視する必要があります。
また、制度変更のタイミングで利用条件やETCマイレージ登録の有無が割引の可否に直結するため、普段から高速道路を利用するドライバーは、次の点を意識しておくことが大切です。
- ETCマイレージサービスへの登録を済ませておく
- 割引適用時間帯を事前に把握しておく
- 無理な運転や速度超過を避け、安全運転を心がける
とくに事前登録の有無で「割引される・されない」が分かれてしまう新制度では、うっかり忘れによる損失を防ぐための準備が重要になります。
まとめ|深夜割引の今後は要注目
今回の見直し延期は、ETCシステムという根幹インフラに大きな障害が発生したことによる、やむを得ない措置です。しかし、深夜割引制度の変更は高速道路利用者全体に影響する大きなテーマであり、今後の発表や制度設計の詳細に注目が集まります。
一方で、制度の目的が「安全運転促進」や「物流業界の負担軽減」にあることを踏まえれば、単なる「割引改悪」ではなく、持続可能な交通社会に向けた第一歩とも言えるでしょう。
今後の動向をしっかりと見極めながら、制度改正に備えた準備を進めておくことが、高速道路利用者にとって賢明な選択といえるかもしれません。